✅声劇の説明
『刺し違えるお見合い──短命な幸福に沈む二人の声劇』は、人間の本質に切り込むバッドエンド型の二人芝居です。
お見合いという形式的な出会いの場で、互いに“まともな生き方”を取り繕おうとする男女。しかし、会話が進むにつれ、表面下に沈んでいた汚染された感情や過去の傷、そして「人間らしさ」の裏側にある黒い感情が次第に顔を出します。
作中では、「生きる意味」や「幸福の定義」といった普遍的な問いを提示しながらも、それらが全て空虚に響いていくような構造を取っています。
最終的に二人が選んだのは、未来への前進ではなく、互いを引きずり込む“終わり”。
希望を拒絶し、どうしようもない感情を言葉にして昇華することで、人間の限界と、他者と関わることの絶望を静かに炙り出します。
話し言葉をベースに構成されたこの声劇は、収録・朗読にも適したリズムと緊張感を持っています。
“演じる”ことでより深く体感できる感情の重さを、ぜひ体感してください。
- 商用利用可能(フリー台本です。さまざまな場面でご使用ください。)
- バッドエンドな作品です。
- 動画化・音声化・朗読など、形式自由。
- 事前連絡やクレジット表記は任意ですが、SNSなどで当ページをご紹介いただけると励みになります。
刺し違えるお見合い──短命な幸福に沈む二人の声劇|男女二人声劇・バッドエンド台本
✅ 声劇本文(約3000文字、男女二人/登場人物:蒼井(あおい)、佐伯(さえき))
【冒頭・導入】
蒼井:
ねぇ、佐伯さん。
人は、なんで生きてるんだと思う?
…いや、ごめん。お見合いの席で言うことじゃないね。場違いだったかな。
佐伯:
いや、むしろ…聞きたかった。
俺も、時々考えるんだ。
生きてる意味とか…
意味の無さとか。
蒼井:
そう。
よかった、話せる人で。
なんかさ、最近、自分の中がどんどん汚れてくみたいで。
言葉にしても、吐き出しても、全然きれいにならないの。
佐伯:
汚れてる?
君が?
蒼井:
うん。
笑ってる顔も、丁寧な口調も、全部“演技”でできてしまうから。
…怖くなるの。
自分の“ほんとう”が、もう死んでるんじゃないかって。
【中盤・本音の衝突】
佐伯:
俺は…
人に期待するのをやめた。
この歳になると、誰もが誰かを刺すために言葉を選んでることに気づくから。
蒼井:
刺すって…
佐伯:
君も刺されたこと、あるだろ?
大事にしてたもの、無神経に笑われたこととか。
信じてた誰かに、静かに裏切られたこととか。
蒼井:
…あるよ。
刺された跡、まだうずく。
たぶん、もう癒えない。
佐伯:
俺も、刺された。
そして、いつの間にか、誰かを刺すようになってた。
だからこそ、お見合いなんて“安全地帯”を選んだのかもな。
最初から、何も期待しなければ、傷もつかない…はずだった。
蒼井:
だけど、傷はもうあるんだよ。
互いに、腐ってるの。
たぶん、私たち、付き合っても長くは続かない。
短命な関係だと思う。
【終盤・崩壊と選択】
佐伯:
だったら、いっそ、刺し違えるのはどうだ?
長生きなんてしなくていい。
幸せのフリをして生きるのが一番惨めだ。
蒼井:
ほんとにそう思うの?
佐伯:
ああ。
“前向き”とか“ポジティブ”とか、あんなのは人間性への裏切りだ。
傷ついてるのに笑うことは、嘘だよ。
蒼井:
…泣いても、誰も見てくれないから、笑ってた。
それが“良い人”の生き方だって、思い込んでた。
佐伯:
やめよう、そんなの。
君が泣いていい場所なんて、この世界にはもう無い。
だったら俺と――
…最後まで、沈んでみるか?
蒼井:
沈んだ先に、なにがあるの?
佐伯:
何もない。
でも、何もないってことを、二人で知れるなら…
それはきっと、“ほんとう”なんだろうな。
【ラスト・バッドエンドの昇華】
蒼井:
じゃあ、もう逃げない。
嘘も、笑顔も、前進も、全部やめる。
生きてる意味なんて、私たちが“死ななかった理由”にしか過ぎなかった。
佐伯:
そうだな。
生きることは、死ねなかった言い訳にすぎない。
未来なんて、進むたびに、人間性が足を引っ張って台無しにする。
蒼井:
こんな私でも、いい?
佐伯:
こんな俺だからこそ、君がいい。
(沈黙)
(暗転)
声劇台本サイトと相性抜群!収録・創作に役立つアイテムをご紹介
声劇台本の制作や投稿を日々行っていると、「実際に演じてみたい」「録音して公開してみたい」と思う方が多いはずです。そんな皆さんの活動をより豊かに、より本格的にするためのおすすめアイテムをご紹介します。
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声劇台本を書くにあたって参考にした書籍のご紹介
僕が作成している声劇台本には、いくつかの作品や作家から影響を受けた部分があります。たとえば、村上春樹の静かで深く沈んでいくような内面描写や、夢と現実のあわいを漂う感覚。太宰治の人間の弱さや孤独に向き合う視点、そして新海誠作品のような、言葉にならない想いを風景や間で表現する技法。これらの作家や作品から受けたインスピレーションを、自分なりに消化しながら台本へと落とし込んでいます。読む方や演じる方にとっても、どこかでそれらの面影や空気感を感じていただけたら嬉しいです。物語の背後には、こうした文学や映像作品の影がひっそりと息づいています。
この声劇台本を見つけてくださって、ありがとうございます!作品を通して、少しでも何かを感じていただけたら嬉しいです。今後も定期的に新しい声劇台本を公開していく予定なので、ぜひ次回作も楽しみにしていてください。当サイトで公開している台本はすべてフリー台本です。特に使用ルールなどはありませんが、ご利用いただいた際には、SNSや配信アプリ、動画の概要欄などでこの台本ページをご紹介いただけるととても励みになります。今後とも、どうぞよろしくお願いします。
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