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この声を聞くな。——イヤホンが繋いだふたりの壊れた関係｜声劇台本・掛け合い・バッドエンド・約3000文字

『この声を聞くな。——イヤホンの向こう側で壊れた僕ら』
（登場人物：ユウ・カナ）

🎙 Scene 1｜いつかの夜

ユウ：
イヤホンって、どうして片耳だけ壊れるんだろうな。
最初は左が聞こえなくなって、そのうち右もノイズまみれになって。

カナ：
壊れてるの、イヤホンだけじゃないよ。

ユウ：
……何が言いたい。

カナ：
あんたの方が先に壊れてた。気づかなかっただけ。

🎙 Scene 2｜繋がる音

ユウ：
俺さ……音楽で世界を遮断してた。
周囲の音が嫌で、全部イヤホンで消して。お前の声だけ聞いてた。

カナ：
そりゃ、壊れるよ。音を閉じ込めて、自分の中に流し込むなんて。
自分で毒を飲んでるようなもんじゃん。

ユウ：
違う。あれは、救いだった。
お前の声は、俺を助けてくれてたんだよ。

カナ：
じゃあ今、なんでそんな顔してるの？

🎙 Scene 3｜沈黙の中の叫び

ユウ：
お前がいなくなっても、声だけ残ってんだ。
再生ボタンを押してないのに、聞こえてくるんだ。

カナ：
それ、幻聴。もしくは呪い。

ユウ：
違うって……！ちゃんと覚えてるんだよ……
「好き」って言ってくれた時の声も、「やめよう」って言った時の震えた声も……

カナ：
忘れてよ。私の声はもう、再生されるべきじゃない。
擦り切れて、ノイズにしかなってない。

🎙 Scene 4｜刺さったままの言葉

ユウ：
声ってさ……刺さるんだな。
耳じゃなくて、心に。深く。抜けなくなるくらい。

カナ：
それ、私のせい？

ユウ：
わかんねぇ。
でも、痛いんだ。生きてる実感なんかより、ずっとリアルに。

カナ：
生きてる実感、欲しかった？

ユウ：
……あの日から、何かが死んだ。だけど何かは、生き残ったままだ。
だから、余計に痛い。

🎙 Scene 5｜ループの檻

カナ：
ねえ、何回この会話してるか知ってる？

ユウ：
……初めてじゃないのか？

カナ：
ううん。もう十七回目。
そのたびにあなた、泣いてる。何も変わらないまま、同じところを回ってる。

ユウ：
ふざけんな……俺はそんな……！

カナ：
繰り返すたびに、あなたの声、擦り切れていく。
この会話が終わるたび、私は消えて、また現れる。

ユウ：
じゃあ……もう、終わらせてくれよ……！

🎙 Scene 6｜声の終わり

カナ：
イヤホンを、外して。
それだけで、全部終わる。私は静かになる。あなたも、自由になる。

ユウ：
でも……お前の声、聞こえなくなるのが怖いんだ……
だって、それしか残ってないのに……！

カナ：
それしか、じゃない。
あなたには、あなた自身が残ってる。……壊れかけてるけど。

ユウ：
それでも、俺にはお前の声が必要なんだ。
どれだけ汚れてても、黒くても、短くても、痛くても……！

🎙 Scene 7｜終幕

カナ：
なら、聞けばいい。
何度でも、私の声を。ノイズにまみれた言葉を。
そうして、自分を刺し続けなよ。

ユウ：
……わかった。
お前の声と一緒に、壊れるよ。ゆっくりと、確実に。

カナ：
ん……
それが、あなたの選んだ「音」なら。

🎧エピローグ：

イヤホンを外せば、すべてが終わる。
それを知っていながら、彼は今日も耳に詰め込む。壊れた声を、壊れたままで。

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