🎭 台本説明
この声劇『ウイルスと人間性──汚染された問いの果てに』は、人間とは何か、生きるとはどういうことかという根源的な問いを、「ウイルス」というキーワードを通して描く、二人掛け合いのバッドエンド声劇です。
舞台は閉鎖された研究所。世界を蝕む黒いウイルスに感染したふたりの研究者が、互いを観察し、理解し、刺し合いながら、それでもなお人間であることの意味を模索します。
「汚染」「短命」「刺す」「黒い」といった暗い言葉を巧みに織り交ぜ、どれほど科学が進歩しても、人間の奥底にある業や矛盾がすべてを引き戻すさまを描きます。
終盤、ふたりの言葉がすれ違い、やがて沈黙へと至る展開は、聴く者の心を鋭く抉り、人間性とは何かという問いを突き付けます。
声劇・朗読・声優活動のレパートリーとして、深く刺さる一作を探している方におすすめの脚本です。
- 商用利用可能(フリー台本です。さまざまな場面でご使用ください。)
- バッドエンドな作品です。
- 動画化・音声化・朗読など、形式自由。
- 事前連絡やクレジット表記は任意ですが、SNSなどで当ページをご紹介いただけると励みになります。
【短編声劇】ウイルスが壊した心と世界──掛け合いで描く終末の記録
登場人物
- ユウ(理知的、冷静、感染初期)
- ナツミ(感情的、皮肉屋、感染進行中)
(静寂、僅かな電子音)
ユウ:
人間はなぜ、破滅を知りながら前に進むんだろうね。
目の前に毒があっても、「自分は大丈夫」って、そう信じ込んでしまう。
それが知性の証明だって?笑わせるな。
それはただの、「鈍感」というウイルスさ。
ナツミ:
……皮肉ね、ユウがそれを言うなんて。
あんた、最初にあの実験を肯定したじゃない。
「未来のためだ」って、涼しい顔して。
その未来が、今こうして黒く腐ってるのに。
ユウ:
未来の形は、誰にも読めない。
それに、ナツミ。君もその“黒い注射器”を持っていた。
見返りを求めたのは、僕だけじゃない。
ナツミ:
求めたよ、救いを。
でも、それは人間らしい欲望だった。
愛されたくて、証明したくて、何かにすがりたくて。
でもね、この汚染は、それすら許してくれなかった。
(間)
ユウ:
君の腕、黒ずんできてる。
……進行してるな。
どんな感覚なんだ?
ナツミ:
焼けるような熱と、氷みたいな孤独。
ねえ、ユウ……
あんたもすぐそうなる。
笑えるよね、こんな小さなウイルス一つで、
人間の理性も、希望も、全部崩れる。
ユウ:
汚染されているのは、ウイルスだけじゃない。
……僕らの心も、最初から“黒”だったのかもしれない。
ナツミ:
やめてよ。
今さら哲学者ぶらないで。
この部屋の中で、私たちが語る綺麗な言葉なんて、
何の意味もない。
ユウ:
じゃあ、意味なんて……
最初から存在しなかった?
ナツミ:
……あったわ。
「生きたい」って叫んだ、最初の一瞬だけは。
(沈黙)
ユウ:
(絞り出すように)
君を、刺せば……
この汚染の連鎖を、止められるかもしれない。
ナツミ:
……やれば?
どうせ、私も同じことを考えてた。
互いに刺し合って、終わらせる――
それが、私たち“人間”の最期にふさわしい。
(ナイフの音、静寂、呼吸音だけが残る)
ユウ:
(吐息まじりに)
……これで、救われた?
ナツミ:
(途切れ途切れに)
救いなんて……最初から……なかった。
ただ、生きる意味を……間違えただけ。
(長い沈黙。電子音が止まる)
ユウ(モノローグ):
僕らが前に進むたびに、足元の影が深くなる。
それでも歩くのが、人間なら――
……人間性そのものが、最大のウイルスだったんだ。
声劇台本サイトと相性抜群!収録・創作に役立つアイテムをご紹介
声劇台本の制作や投稿を日々行っていると、「実際に演じてみたい」「録音して公開してみたい」と思う方が多いはずです。そんな皆さんの活動をより豊かに、より本格的にするためのおすすめアイテムをご紹介します。
僕自身も、声劇台本を書くだけでなく、実際に音声化された作品を聴いたり、簡単な編集をしたりする中で、「このマイク良かった!」「この本は脚本の書き方に参考になった!」と思えるものをいくつかピックアップしました。
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価格と性能のバランスが取れていて、「一歩プロに近づきたい!」という方におすすめのマイクです。音の輪郭がクリアで、セリフの抑揚や感情も丁寧に拾ってくれます。
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収録後のノイズ除去やBGMの挿入など、簡単な編集ができるだけで「作品の完成度」が一気に上がります。
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声劇台本を書くにあたって参考にした書籍のご紹介
僕が作成している声劇台本には、いくつかの作品や作家から影響を受けた部分があります。たとえば、村上春樹の静かで深く沈んでいくような内面描写や、夢と現実のあわいを漂う感覚。太宰治の人間の弱さや孤独に向き合う視点、そして新海誠作品のような、言葉にならない想いを風景や間で表現する技法。これらの作家や作品から受けたインスピレーションを、自分なりに消化しながら台本へと落とし込んでいます。読む方や演じる方にとっても、どこかでそれらの面影や空気感を感じていただけたら嬉しいです。物語の背後には、こうした文学や映像作品の影がひっそりと息づいています。
この声劇台本を見つけてくださって、ありがとうございます!作品を通して、少しでも何かを感じていただけたら嬉しいです。今後も定期的に新しい声劇台本を公開していく予定なので、ぜひ次回作も楽しみにしていてください。当サイトで公開している台本はすべてフリー台本です。特に使用ルールなどはありませんが、ご利用いただいた際には、SNSや配信アプリ、動画の概要欄などでこの台本ページをご紹介いただけるととても励みになります。今後とも、どうぞよろしくお願いします。
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