🎭 台本説明
沈黙とは逃避なのか、それとも最後の抵抗なのか——。
この作品『無言に沈む夜に』は、二人の人物の間に流れる“語られなかった言葉”と“汚染された感情”を軸に展開される、バッドエンド声劇です。
冒頭で問いかけられる「言葉がなければ、人は本当に通じ合えないのか」という疑問。そこから始まる二人の掛け合いは、やがて言葉の“無さ”が剣となり、心を刺す展開へと変化します。
黒く、短命で、取り返しのつかない感情の連鎖。
沈黙が意味を持ち、沈黙が壊していく。
そして最後に残るのは、どうしようもない感情の泥。
進もうとするたびに足を引きずる“人間性”という名の泥沼。
無言であることの罪と、それを選んでしまった人間の哀しみを描きます。
- 商用利用可能（フリー台本です。さまざまな場面でご使用ください。）
- バッドエンドな作品です。
- 動画化・音声化・朗読など、形式自由。
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『無言に沈む夜に』——言葉を失くした僕らの結末｜声劇台本・二人掛け合い・バッドエンド・3000字
🎭 声劇台本
※ 登場人物：
- ユウ（静かな怒りと諦念を抱える人物）
- ミカ（言葉を交わせずにいるが、心の中では叫び続けている）
【Scene：暗い部屋、夜。窓の外は雨の音だけが続いている】
ユウ：
（静かに）
ねえ、どうして何も言わないの。
……まただよ。
何度目だろう。君が何も言わずに、ただ、そこに座ってるの。
（間）
ミカ：
（無言）
ユウ：
怒ってるなら怒ってるって言えばいい。
泣いてるなら泣いてるって……
なんで、そんなに「無言」でいられるのか、わからない。
（雨音強まる）
ユウ：
（少し声を荒げ）
……言葉がないと、人って何にも伝えられない。
それとも、伝える必要もないって、そう思ってる？
（ミカ、表情変えず、黙っている）
ユウ：
（ため息混じりに）
もう全部、汚れてるんだ。
この関係も、部屋の空気も、君の目も。
黙ってるってことは、もう戻る気なんてないんでしょ。
（沈黙）
ユウ：
僕たち、いつからこんな風になったんだろう。
最初はもっと…もっと、ちゃんと話してたよね？
でも、気づいたら「無言」が僕たちの言葉になってた。
（ミカ、少しだけ顔を伏せる）
ミカ：
（かすかに、でもはっきり）
…だって、言葉って…
結局、誰かを刺すことにしか使えないから。
ユウ：
（目を見開いて）
…ミカ…。
ミカ：
（声は小さいが確かに）
何を言っても、傷つける。
何も言わなくても、傷つける。
だったら……何も言わない方がいいって、思ったの。
ユウ：
（静かに笑う）
それは……それは一番汚いやり方だ。
沈黙って、最悪な毒だよ。
時間が経つほど、全身を蝕んで、最後には壊す。
（間）
ミカ：
わたしね、
ずっと「ごめん」って言いたかった。
でも、それすらもう、間違いに思えて。
ユウ：
（うつむく）
間違いでも、言えばよかったんだよ。
でも…もう遅い。
僕らは、互いの“無言”に殺されかけてる。
ミカ：
（苦笑）
本当ね。
なんで、人間ってこうなのかな。
何をしても、どこまで進んでも、結局こうして足を引っ張る。
ユウ：
…それが、「人間性」ってやつなんだろうな。
綺麗ごとより、泥みたいな感情のほうが強くて、
そっちに呑まれてしまう。
ミカ：
（声を震わせながら）
…私たち、もう戻れないのかな。
ユウ：
（目を閉じて）
戻れないよ。
だって、もう——
（間）
ユウ・ミカ：
——言葉が死んでしまったから。
（長い沈黙。雨音だけが響く）
【暗転】
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