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三人声劇台本:欝欝たる-ウツウツタル-

三人声劇台本:欝欝たる-ウツウツタル-
気がめいて晴れ晴れしない様子
  • 三人声劇台本
  • 10分読了
  • 商用利用可能(さまざまな場面でご使用ください。)

○今日の配信開始は21時だ。

配信開催時間に合わせて、僕のリスナーがドッと押し寄せてくる環境に満足していた。

いつもの様に配信開始ボタンを押して、リスナーを待つ。

僕の大事な大事な僕だけのリスナー。

「せいちゃんさん、いらっしゃい。こんにちは!」

「初見さんかな?あ、初めましてだね。」

「今日の配信ランキング見た?!みんな勢いヤバいよね…。」

「最近、激辛ラーメン食べたんだよね。」

淡々と配信が進んでいく。

配信開催から5分経過した辺りで異変に気付く。

「あれ?金枠と銅枠が来てないぞー!?何してるんだろうね?」

×「こんにちは!」

○「あ!くじら君。やっと金枠が来たよ。遅刻だよ。」

「コラボ上がれよ。」

×「ごめんごめん、つみきちゃんの枠見てたら、定時過ぎちゃってたね。」

○「つみきちゃん?誰それ?」

×「知らないの?」

「NEW DJでアクティブ100人で投げ銭が一枠で50万くらい飛ぶつみきちゃん。」

「めっちゃ声良いし、トークも上手いし、初見巡りもしてるらしいから、この枠にも来るんじゃないかな?」

○「は…?アクティブ100人?投げ銭50万?」

×「スゲーよね。」

「この枠はガツガツしてなくて良いわー!」

「アクティブも10か15くらいで、投げ銭も300フォロワー記念とかの枠でしか飛ばないから、気軽だわ。」

○「まぁ、僕はリスナーさんに寄り添った枠してるからな。」

×「うん、良いと思うよ。」

○「つみきさん、いらっしゃい。初見さんかな?…ゆっくりして行ってね!」

×「え!?つみきちゃんじゃん!?」

○「もしかして、さっき言ってた子?」

×「そうそう!コラボ誘っちゃえよ!」

○「つみきちゃんが良いなら、だけど。」

×「あ!いいらしいよ!」

○「じゃあ、上げるわ。」

△「こんにちは!初めまして!」

○「はじめまして。」

×「こんにちは!今日は枠良かったよ!」

△「くじらさんが居てくれて助かりました!また来てくださいね!」

×「いやー!カワイイ!」

△「今日は尊い投げ銭貰ってびっくりしちゃった。」

×「全く!つみきちゃんの為なら、いくらでも投げるよ!」

○「尊い投げ銭投げた?お前が?」

×「うん、尊い投げ銭って結構、投げるとき、手震えるんだね。」

○「僕の枠で3kなのに?」

×「まぁ、つみきちゃんと僕の仲だからなぁ。」

「カワイイんだ。投げると絶句するつみきちゃんが何だか病みつきになっちゃうんだよね。」

△「ありがとう、くじらさん!」

「また待ってる!」

○「僕の枠で金枠のお前が、他で投げて言い訳ないだろ?!」

×「は?どこで、何を投げたっていいだろ?俺の金なんだから。」

○「まぁ…そうだけど。」

×「なに?なんでそんなイラついた声してるの?」

「あ、分かった。つみきちゃんに俺が投げたからだなぁ?」

「俺はお前の事、応援してるよ!」

「毎回の枠に来るから安心しろって」

○「ふざけんな!」

×「…なんだよ。怒んなって。」

△「私、今日、用事あるから落ちますね。」

×「うん、つみきちゃんありがとう!」

「枠主、疲れてるみたいだから、またコラボしようね。ごめんね。」

△「はい!また、お願いします!」

×「あぁ、つみきちゃん、落ちちゃった。」

「お前が急に怒鳴るせいだぞ。」

「どうしたんだよ、お前」

○「何でもない。」

「今日は枠、終わる。」

×「は?待てよ。まだ配信時間90分もあるぞ?」

○「何か、今日やる気しねーわ」

×「やる気無い訳じゃなくて、つみきちゃんに嫉妬してるだけだろ?!」

○「は?違うし。」

×「お前はどうなりたいの?」

「投げ銭もアクティブもまぁまぁなお前が、人望失ったら、もう配信に居れなくなるぞ。」

○そこから、僕がどう配信を切り上げたかは記憶がない。

総金枠は姿を消し、リスナーも次第に減っていった。

Xには自分の考えをポストしたけど、

そのポストはリスナーへの愚痴、去っていったリスナーへの不満で満ちていた。

「もう、配信したくありません。」

「配信卒業枠は、いつもの21時から。」

「完走するか分からないけど、来れたら来て。」

言葉の端々に棘があるポスト。

絵文字もない。顔文字もない。

そこにコメントされる「えっ!辞めちゃうんですか?」という文字。

フォローしてから一回も来ていないリスナーからのコメントは僕の気持ちを逆なでした。

次第に別のポストを無意識に書いている。

「仲良くもない奴が、今更寂しいとか書くなよ。」

ついに溢れてしまった僕の気持ち。

僕は自分を知った気になっていたらしい。

本当は投げられたかった。

本当はアクティブが伸びれば嬉しかった。

フッとランキング1位に躍り出ているつみきちゃんの枠を見つけた。

若干の後ろめたさはあったものの、誤タップという装いを使って枠をタップする。

△「あ!ことはさん!この前はコラボにせっかく上がらせてもらえたのに、落ちちゃってすいませんでした。」

「また、伺わせていただきますね!」

○つみきちゃんのトークが中断され、リスナーの視点が僕に向かった。

「つみきちゃんの知り合い?」

「誰?配信行ってみようかな!」

全て前向きなコメントに見えるけど、僕には分かる。

つみきちゃんから優しい人というポジションを得たいがために、

自分へ善意のコメントを持って、

利用しようとしているのを。

△「とっても声が素敵な方だよ!」

「また、私もことはさんの配信にコラボ上がりに行きたいです!」

×「行く価値ないよ」

○アクティブが50近くもあるコメント欄を止めたのは、紛れもない僕の総金であるくじら君だった。

一瞬止まったコメント欄に戸惑ったのかつみきちゃんが言葉を作った。

△「価値の無い配信なんて無いよ!」

「相性はあるけど、みんな素敵な配信者さんばかりだね!」

○最後に聞いた言葉はその辺りだった。

気づくと全く知らないNew DJの枠に居た。

□「ことはさん、いらっしゃい。」

「よかったら、ゆっくりして行ってね!」

「…」

○New DJと配信に慣れたDJでは決定的にここが違うというポイントがある。

それは、入室コメントを読んだ後の初見さんへのアピールだ。

「こいつは何で配信なのに黙ってるんだ?」

言葉はいつしかコメントになって、

可視化されていった。

□「配信始めたばっかりで。」

「トークがまだ慣れてないんですよ。」

「すいません。」

○静まり返るコメント欄。

「どうせアクティブなんて増えやしない。出来っこない。」

「どうせ、達成できない。有名になるなんて。」

□「ブロックしますね。」

「…」

○「どうせ出来っこない。」

「どうせ、達成できない。」

この考えが自分の力を過小評価していった。

独りぼっちの部屋でつみきちゃんの配信枠をステルスしている自分はどうかしてる。

自分のことで持ち切りになっていると思ったけれど、既に過去のものになっていて、

今では最近のスタバの新作のトークに切り替わっている。

△「スタバの新作、もうみんなは飲んだ?」

「きゃ!くじらさん、天使スプーン!ありがとう!」

「みんなもバスターやコメントありがとう!」

「みんなが居て、出会えて良かった!」

「ランキング上位配信者に押し上げてくれるの!?」

「私、頑張る!」

○掲示板に彼女の悪口を書く僕を、あの去っていったリスナー達はどう思うのだろうか。

詩から声劇台本を考える

声劇台本を作成する前にまず詩を考えます。今回の声劇台本のもとになった詩をご紹介します。

君の言っていることは正しい。
知っているかい?
人に嫌われる効率の良い方法を。
それは、正論を唱え続けることさ。

声劇台本を書くにあたって参考にした書籍

僕が作成した声劇台本にはインスピレーションを受けた事象や書籍があります。それらの書籍を簡単にですが、ご紹介します。

一人称単数 文春文庫 村上春樹(著)
ノルウェイの森 上 (講談社文庫)
ノルウェイの森 上 講談社文庫 村上春樹(著)
晩年 (新潮文庫)
晩年 新潮文庫 太宰治(著)
小説 言の葉の庭 (角川文庫)
小説 言の葉の庭 角川文庫 新海誠(著)

seichan

声劇台本-Fullcityはバッドエンドな声劇台本をご提供いたします。

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