追憶-ツイオク-
さかのぼって過ぎ去ったことを思いしのぶこと。 追懐。
- 二人声劇台本
- 5分読了
- 商用利用可能(さまざまな場面でご使用ください。)
○「あの場所はどうなっているんだろう。」
そう呟いて彼女の顔を見る。
×「さぁ。誰か住んでるんじゃない?」
○興味無さげにスマホをいじる彼女の姿と問いかける僕の様子は、どこにでもいる元彼氏・元彼女だった。
冷めた恋から何も生み出さないように、彼女もまた何も生み出さないゲームをしている。
「ちょっと行ってみない?住んでたアパートに」
×「え、何で?」
○「誰が住んでいるか見てみるだけだよ。」
×「いやよ。めんどくさい。」
○「もし」
×「『もし』なに?」
○「もし、誰かが住んでいたら、僕は諦める君のこと」
「もし、住んでいなくても、君とのこと過去のことに出来ると思うんだ。」
×「一人で行ってきなよ。」
○「しっかりしたいんだ。」
×「まぁ、別にいいけど。」
○しっかりしたい?自分の言葉のセンスが無いことに驚きながら、僕らは歩き出した。
×「あ。」
○先に見つけたのは彼女だった。
物干し竿にいくつもの洗濯物が掛けられている。
「誰か住んでるみたいだね。」
×「そうね。」
「何だか、一緒に住んでたことが嘘みたいね。」
○「そうだね。」
×「そういえば、アパートの合鍵、捨てた?」
○「うん。もう捨てた。」
×「そっか。」
○あの頃、僕たちが住んでいたアパートには誰かが住んでいて、それでも僕らが住んでいたという跡はあって。
僕らは、そのアパートから別々の道を指さし別々に歩いていった。
道すじに二人の跡が付かないように。
詩から声劇台本を考える
声劇台本を作成する前にまず詩を考えます。今回の声劇台本のもとになった詩をご紹介します。
あの場所には残っている。
誰にもわからないだろうけど、
一緒に過ごした二人の跡が。
声劇台本を書くにあたって参考にした書籍
僕が作成した声劇台本にはインスピレーションを受けた事象や書籍があります。それらの書籍を簡単にですが、ご紹介します。