愛惜-アイセキ-
大切にし、手放したり損ねたりするのを惜しむこと。「―の念」。気に入って大切にすること。
- 一人声劇台本
- 5分読了
- 商用利用可能(さまざまな場面でご使用ください。)
○別れて、何年が経ったのだろう。僕はまだ彼女が好きだ。
喧嘩別れだから、彼女が僕を好きだということは絶対にない。
けれど、なんで僕が彼女をまだ好きなのか。
わからないことだらけだけど、僕はまだ彼女が好きだ。
何で喧嘩したんだっけ。
喧嘩した理由も喧嘩してた彼女の表情も思い出せない。
けど、喧嘩別れをしたという現実がある。
だから、もうやり直せない。
「あ。」
声が虚空に沈む。
彼女がいたときは、「奇声あげないでよ。」くらいには返事があったんだけどな。
彼女と別れて、もう数年経ってしまった。
彼女はもう、どこかの土地のどこかの誰かと一緒に暮らしているかもしれない。
僕も、この数年で彼女を作った。空虚だった。さっき発声した「あ。」くらいに。
「あ。」っという間にその彼女とはセックスをして、「あ。」っという間に別れた。
彼女は今、何をしているのだろう。
彼女は今、何を思っているのだろう。
彼女は今、僕を考えていないかしら。
考えても無駄なことばかりが頭に呟かれていく。
あの時、引き留めていたら。
あの時、連絡をしたら。
あの時、会いに行っていれば。
あの時、あの時、あの時。
あの時、僕が躊躇っていた時。
まだ遅くはなかった。
もう、遅いんだ。
「あ。」
空虚な声は文字になり空中を浮遊していく。
僕の心も、どこか遠くに飛んで行ってしまえばいいのに。
詩から声劇台本を考える
声劇台本を作成する前にまず詩を考えます。今回の声劇台本のもとになった詩をご紹介します。
今、思えば、
あの時でも、
その時でも、
全く遅くはなかった。
声劇台本を書くにあたって参考にした書籍
僕が作成した声劇台本にはインスピレーションを受けた事象や書籍があります。それらの書籍を簡単にですが、ご紹介します。